2013/3/6 本田布由樹
段々と舞台の日も近づいてまいりました。
能に詳しい方はご存知かと思いますが、能楽師にとって「道成寺」とは若手の卒業試験とも言われる特別な曲です。
囃子ごとや技術的、肉体的な難易度もあり、大曲秘曲の代名詞のように言われています。
この「道成寺」は有名な「安珍と清姫」の説話を元にした曲になります。
若い僧の安珍に恋をした清姫、仏僧の身だからと逃げる彼を追いかける内にその身は大蛇となり、日高川を易々と泳ぎわたり、ついには安珍の隠れた鐘にまとわりつき焼き殺してしまい、自分も日高川に身を投げ死んでしまった・・・・・・というお話です。
なんとも苛烈で報われないお話ですが、有名なので道成寺を見たことのない人でも聞き覚えはあるのではないでしょうか。
道成寺の見どころは数多くありますが、一番の特徴はやはり「乱拍子」と「鐘入」でしょう。
乱拍子は道成寺の鐘に向かって、シテの白拍子が一歩一歩階段を昇り近づいていく様を表していると言われていて、小鼓の音に合わせて足のつま先を上下させたりなどする、とても変わった舞です。
ひどく動きが少なく、静寂の中の激しさはむしろ濃密な気迫が必要とされます。
乱拍子の後に急ノ舞という能の中で一、二を争う速度の舞があり、ついに鐘入になります。
通常は金春流でも鐘入は鐘の下に入り正面を向いてから、真上へ飛び上がる型になります。
しかし、金春流でも「斜入」と呼ばれる鐘入をすることがあります。
これは落ちる鐘の外側から内に向かって、斜めに飛び込むというダイナミックな型であり、非常に見ごたえのある場面です。
我が家では道成寺はこの型でさせて頂いていて、今回の私の道成寺も「斜入」の鐘入となります。
鐘入はタイミングが命。
見事に鐘に入ることが出来るのか、ぜひ能楽堂にてご覧ください。
2013/3/6 本田布由樹